理科教師の心得。

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「先生ー?なんでボーっとしてんの?悩みがあるなら聞くよ?」 ……私が上の空状態になっていたとき、生徒の言葉で意識が引き戻されました。 「考え事?じゃあ俺らは教科書でも読んで勉強してるからね? 後でここ教えてー」 「うわ、お前が教科書持ってくるとか、今日雪でも降るんじゃね?」 「まだ9月だよ馬鹿」 私のことをフォローしてくれるあたり、この子達に悪気はないのでしょう。 寧ろ、つまらないはずの授業を聞こうとしてくれているのは、とても有難いです。 「はい、喜んで…。  どこを教えればよろしいですか…?」 「え、教えてくれんの!?  じゃあここお願いしまーす」 ふむふむ、どれどれ… 「これはオームの法則を使って計算する問題ですね…  中学校で習ったと思うのですが…」 「え~、俺そんなのやってねーし。  この電圧ってどう求めんの?てか電圧って何?」 ……ここは偏差値40以下の男子校だということ、 すっかり忘れていました。 「お前なぁ、電圧の計算くらい俺でもできるわ。  ……あれ?これ割りきれなくね!?」 ……電圧を求める式は「抵抗×電流」のはずです。 なぜ「割りきれない」などということが起こるのでしょうか? 「あの…  良かったらオームの法則から教えましょうか…?」 「オウムの放送局!?そんなんあるの!?」 ……あの、もはやこの子たち、頭が悪いとかそういった問題ではない ような気がするのですが……
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