恋と手紙と君と僕

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 ***  そして、土曜日。僕はきちんと目覚まし時計をかけて七時には起床し、洗濯機を回し、朝食を作るという貢献をした。いや、いつも妻が当たり前にやっていることを“貢献”なんて呼ぶのもおこがましい気がするけれど、深夜に帰ってきてふらふらな体でよくやったもんだと思う。七時半頃に起きてきた妻、九時まで寝ていた娘(ちなみに今七歳だ)にはだいぶ目を丸くされた。僕が作れる朝食なんてピザトーストくらいなものだけれど、それでも朝起きた時に既に出来上がっている朝食のありがたさは、僕自身がよーく知っている。毎日頑張ってくれる妻には感謝してもしきれない。 『私からあなたへ。  おはよう』 「うん、おはよう涼音(すずね)」 『寝てていいのに』 「そ、そういうわけにはいかないよ!最近いっつも寝坊してばっかりだったし、休日に全然家事とかやってなかったし。今日は僕が頑張るよ、へたくそだけど!」 『そう、ありがとう』  ああ、まだ駄目なのか。僕は少しだけがっかりする。ありがとう、と言ってはくれたがそれも手紙の上でのことだ。彼女は口では相変わらず何も言ってくれない。昨日帰って来た時も、手紙の上で“お帰り”と交わしただけだった。まだ何か、地雷を踏んだままだというのか。  パジャマ姿のままいそいそと朝食を食べた彼女は、僕の言葉に甘えることにしたのかそのまま歯だけ磨いて部屋に戻っていってしまった。外に遊びに行くのも部屋でネットをするのも好きな彼女であるが、先週あたりからやりたいことでもあるのか部屋に引きこもっていることが増えたような気がする。勿論、家事は短時間でぱぱっと済ませるので凄いと思うけれど。 ――あ、朝ごはん作って機嫌取ろうとしたのバレてるのかも……!昼ごはんと、晩御飯と、掃除も頑張らないと!  ちなみに、やや空回り気味であった僕は、洗濯機を回したまますっかり忘れてしまい、昼頃に娘に干し忘れを指摘されて悲鳴を上げることになるのである。  パートとはいえ、仕事をしながらこれらの家事をきちんとこなして僕と娘を助けてくれる、妻は本当に立派だと思う。大好きだ、と再確認させられること必至だ。  だからこそ。 ――お、お願い!早く機嫌治してええええ!
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