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「あんたぜんぜん泣きそうな恋愛して無いじゃないの」
魔法熟女はあたしの出したお煎餅をポリポリ食べながら言った。
「残念でした。今は順調に恋愛成就に向かってるから泣きたくなんかならないわ」
「順調に?」
「そうよ、積極的にあたしの恋心をアピールしてるわ。絶対あたしのことが気になって仕方がなくなること間違い無しよ!」
「ふーん、どうやってアピールしてんの?」
「ふふん、聞きたい?」
あたしは得意満面で語った。
「放課後になったら全力で下駄箱のとこまで走って、彼が来たら一緒に帰ろって言ったり…」
「それ…待ち伏せだね。で、一緒に帰ってんの?」
「ううん、友達と帰るからって…きっと照れてんのよね」
「…それから?」
「彼が家に帰って部屋の電気が点いたら『お帰り』ってLINE送ったり…」
「部屋の電気が点いたのはどうやったらわかんのよ?」
「全力で先回りして彼の家の近くの電柱の影からこっそり眺めてるのよ!」
「…あんたそれストーカーよ」
「え?別に彼を困らせようとか思って無いわよ」
「困ってるに決まってんでしょ。絶対やばいヤツって思われてるわよ。『お帰り』ってLINE送ったらなんて返事来んのよ?」
「最初のうちは、『ただいま』って返信来たけど、だんだん返信来なくなって、今は既読もつかないわ」
「あんた絶対にLINEがブロックされてるわよ」
「そーかなー?あたしの全力の愛にメロメロなんだと思うよ!」
魔法熟女はお煎餅を食べるのをやめて考え込んだ。
「この前渡したカプセル見せて」
「え?あの日のうちに飲んじゃったわよ!」
魔法熟女は持っていたお煎餅を落とした。
「えええ?飲んだ?」
「うん?」
魔法熟女は眉間に皺を寄せて考え込んだ。
「それは…」
「それは?」
「マズいわ」
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