4.不純で純粋で単純な動機

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 レモンティーの彼は、レンガ色の箱の中で何を考え、何のために体を鍛え、何のためにあの高校に通っているのだろう。どこに向かって生きているのだろう。  彼の箱の中は、どんなふうになっているのだろう。どんな空気が漂っているのだろう。淀んだ空気なのか、清らかな空気なのか――  どんな空間に身を置いていたら、ああいった善意的な行動ができるのだろう……。私たちはそれが知りたいのだ。  もしも、知ることができれば、私たちは完全に融合し、いつか彼と同じように、私たちのような存在のために、善意的な何かをしてあげることができるのだろうか――  だから私たちはあなたと同じ高校に行きたい。少しでもそばにいて、あなたの生態を観察し続けたい。単純にそう願っているだけなのだ。  もしも、大城(おおしろ)高校の面接のときに、「志望動機は名前すら知らない在校生の男子の生態観察をすることです」と答えたら、「不純だ」というレッテルをはられて、間違いなく不合格になるのだろう。  でも、私たちの真の志望動機は私たちにとってはあくまで純粋なものなのだ。できる限り彼のそばにいて、彼という人間を知りたいだけなのだから。
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