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私には自覚がある。遊びだと知ったうえで、あなたたちに付き合ってやっているんだという自覚が。
現在進行形で一体化しつつある「永水踏子」は、自分のことを「私たち」と捉えるよりも、「私」と捉えることのほうが自然に思えていた。
私は一刻も早く、この無意味で不気味な遊びから卒業したかった。自覚があるとはいえ、遊びに付き合っているうちは、あのヒトたちの操り人形であり、支配下にあることに変わりはない。大城高校の合格証書を手に入れたことによって、ずっと満足させることができなかったあのヒトたちの歪んだ心を満たしてあげることができたのだから、いい加減、人形であることからも、ごっこ遊びからも開放して欲しい。操り人形の糸を1本残らずぷっつりと切って欲しい。
いや、切って欲しいなどと、他力本願な気持ちでいることこそ、私はあのヒトたちから真に逃げることはできないのだろう。私は自分自身の手でハサミを握り、その糸を切っていくしかないんだ。
ぷつん、ぷつん、ぷつん。
体のあちこちから、心地のいい音が響いてきた。
ぷつん、ぷつん、ぷつん。ぷつん、ぷつん、ぷつん。
無理矢理持ち上げられていた手や、歩かされていた足から力が抜けた。しごかれていた頭がまっさらになった。まるで、フリーズを繰り返していた電子機器から不必要なアプリを全削除した途端、すんなり作動するようになったみたいに、脳内がリセットされ、体全体を思うがままに動かすことができるようになっていた。私はもう自由なんだと確信した。
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