第五章 突然の訪問

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 一応「お邪魔します」と声をかけて大雅の家に上がる。玄関から右手の部屋がおじさんの趣味部屋、その隣がトイレとお風呂で、リビングのドアはその向かいだ。  晴翔は迷わずにリビングに入った。背中に、一つに結んだ長い髪が揺れる。もう腰に届きそうな長さで、ふと「これだけ伸ばすのに何年かかったんだろう」と気になった。もしかしたら、中学の三年間ずっと伸ばしていたのかも知れない。  大雅はリビングに続いているダイニングキッチンにいた。晴翔を一瞥し、何も言わない……晴翔も、何も言わなかった。 「コーラでいいか?」  大雅は冷蔵庫を開けると2リットルのペットボトルを取り出し、ロゴの入った背の高いコップを食器棚から三つ出して注ぎ始めた。 「なんだよ、座ってろよ」  促されて晴翔とソファにちんまりと腰掛ける。来慣れている大雅の家なのに、今日はなぜか緊張感がある。 「どうぞ」  ややぶっきらぼうに置かれたコップの中で、シュワシュワと元気のいい炭酸が弾ける。晴翔はコップを鷲掴むとごくっと飲んだ。 「お前んちいつもこれだな」 「定番って言ってくれ。晴翔んちは夏に出してくれるレモネード好きだったな」  他愛ない会話から、今までの晴翔にはない、柔らかな雰囲気を感じ取った。
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