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会計を終えて晴翔が待っている席に戻る。大雅のトレイを見て、晴翔が大袈裟に驚く。
「大雅、お前甘党だったっけ? ドーナツ四個もよく食えるな」
「違うよ、これはお前の分。飲み物わかんなかったからコーヒーにしといた」
晴翔が大雅を凝視する。何か……言いたいことがあるような、でもそれをためらっているような変な空気感だった。
「ね、食べよ? ドーナツ美味しそう」
取りなすように言ってみたけれども、晴翔は相変わらず何か言いたげなままだった。
「お前んちでさ、おやつ勝手に食ったことある」
「え?」
突然の大雅の告白に、わたしも晴翔も何の話? と首をかしげた。大雅は構わずに続けた。
「あんとき晴翔、香奈を呼びに行ってていなくてさ、リビングにおばさんが焼いたシフォンケーキがあってつい、さ……だって、おばさんのケーキ、すげえいい匂いしてたんだぜ? 我慢できないよ」
「マジかよ。あんときオレ、お母さんにすげえ叱られたんだぞ? ぜんっぜん身に覚えなかったのにさ」
「ごめん。だから今更だけどこのドーナツはあの時のお詫び」
そう言うと大雅は自分の分のドーナツとアイスコーヒーをトレイからテーブルに移すと、晴翔の分が乗っているトレイを捧げ持つように差し出した。
「……ま、そういうことなら食ってやらんでもないけどな」
晴翔がニヤリと笑う。大雅もニヤリと笑って、わたしは内心ほっとした。
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