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第一章 三年後
晴翔がいなくなってからの三年間は、空っぽ以外の何ものでもなかった。期待に満ちたはずの中学校生活が、ちっとも楽しくない。それくらい、晴翔の影響力は大きかった。
晴翔、新しい友達できた? 学校の行事、楽しんでる? 晴翔は走るのが早いから、きっと体育祭で目立つよね。もしかしたら、モテちゃうかもしれないね。
晴翔はどこに住んでるんだろう。どこの学校に通ってるんだろう。わたしも大雅もパソコンを持ってないし、スマホもまだ買ってもらえてなかったから、調べる手段がない。
母は時々、晴翔のおばさんの名前をネットで検索してたみたいだけど、なんの手がかりもない、と言っていた。
大雅と毎朝待ち合わせして学校に向かう。わたしたちはいつの間にか「つきあってる」という噂を立てられた。
わたしも大雅も、お互いになんとも思っていないのに周りが、わたしたちが幼馴染みであることを許さない……わかりやすい形に嵌めようとする。
自然と大雅とあまり話さなくなった。朝も、別々に学校に行くようになった。
喧嘩したとか嫌いになったわけではないから、大雅が部屋にいれば声をかけることもあった。わたしの部屋のちょうど正面に大雅の部屋があり、窓越しに会話ができる。
わたしたちは意識的に晴翔の話題を避けた。表面は馬鹿話をし、ドラマやバラエティの話をし、部活の話をする。でも、心の奥底ではわたしも大雅も「何かが足りない」と感じていた。
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