第五章 突然の訪問

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「で?」  大雅が促す。晴翔はそんな大雅から目を逸らし、聞こえるか聞こえないかくらいの声で言った。 「その、悪かった。怪我させちゃったりとか」 「ああ、大したことねぇし。大丈夫」 「香奈も、その……ごめんな、色々」 「ううん……、いいの」  なぜ突然謝ったのか。なぜ雰囲気が変わったのか。柔らかくなった晴翔は、張り詰めていたものがなくなってなんだか少し、昔の頃に戻れたような気分だ。 「まあ、それでさ。二人のどっちでもいいんだけど」  晴翔はポケットからハサミを取り出し、テーブルに置いた。 「髪、切ってくれないか」  晴翔の顔と、テーブルの上のハサミを交互に見る。大雅も同じように晴翔とハサミを見ている。 「もう、切っていいんだ。伸ばす理由がなくなった」 「切る、って……」  先生に注意されても、生徒会に呼び出されても頑なに髪を切らなかった。クラス中、ううん、学年中から注目を浴びて、孤立して、誰とも仲良くなろうとしなくて。わたしにだって、「話しかけるな」と牽制してきたのに。 「理由聞いていいのか」 「んー……、うん、いいよ。願掛け、してたんだ」 「願掛け?」 「うん」  大雅がハサミを取った。晴翔の後ろに立つ。 「良かったな」 「ん?」 「叶ったんだろ? 願い事」 「……うん」  晴翔はニヤリと笑い、解放されたかのように言った。 「苦しかったなぁ……けど、やった甲斐があった」
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