第一章 三年後

4/7
83人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
 大雅と離れ、クラスごとに席につく。体育館のステージを正面に見て、左から右に一組から六組の順で、各クラス四列で分かれている。わたしは五組だから右から二つめの組の、ちょうど真ん中くらいの位置に座った。  各教員の挨拶、校長先生の挨拶、来賓の祝辞……それらを聞きながら、近くに座っている生徒たちを何気なく見ていた。  ふと、また目の端に綺麗な黒髪が目に入った。さっきの、男の子……だ。  その人は、わたしと同じ組だった。わたしの位置からは二列前の左端に座っている。  顔はよく見えない位置だけど、なんとなく惹かれて観察した。大雅は男だって断言したけれども、確かに全体から受ける印象は直線的で、女の子の持つ柔らかさや丸さがない。  彼の長い髪は肩、そして背中へと流れている。すっと背筋を伸ばしているその様子、かすかに見える顎のラインに懐かしさを覚える。そういえば、名簿に同じ名前を見つけて思わず大雅に報告しようとしたことを思い出した。  まさかね、と自分に言い聞かせながらそっとクラス名簿を見る。だってほら、よくある名前だよ。苗字違うし。きっと、名前が同じだから雰囲気も似るんだよ。それに、あんなに長く髪を伸ばすなんてあり得ないよ。  そう自分に言い聞かせても、わたしの目は彼に吸い寄せられる。どうしても期待してしまう……もしかして、と。  こっち向かないかな? 顔を見れば確信できるのに。  入学式の間中、「こっちを向いてください」と心の中で話しかけた。でも、そんなの通じるわけがない。  気がつけば入学式はいつの間にか終わり、わたしたちはホームルームのためにクラスごとに各教室へ向かった。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!