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第二章 晴翔の三年間
晴翔、大雅と三人並んで駅まで歩く。こんな風に三人並んで歩ける日がまた来るなんて。中学の三年間、ずっと想像して、でももう叶わないんだって手放して、そしたら今日、叶った……。
「晴翔、お前今どこ住んでんの?」
「駅二つ先。駅からは歩いて20分かな」
「結構遠いね」
聞きたいことはたくさんあるのに、何から聞けばいいのかわからなくてわたしはほとんど黙ってた。大雅が高校のことや部活は何に入るのか、なんてことを聞いている。
駅から少し離れたところにあるドーナツショップに入り、席を取ってから注文に行こうとしたら、晴翔は座ったままだった。
「晴翔、行かないの?」
「オレはいいや。二人で行ってきな、荷物見てるから」
「……うん、じゃあちょっと行ってくるね」
晴翔を置いて大雅と二人、ドーナツを選んでレジに並ぶ。大雅のトレイにはドーナツが四つもあった。
「大雅、そんなに食べるの?」
「違うよ、これは晴翔の分も入ってる」
「え? なんで?」
「……再会の奢り」
「えー、ずるい! わたしにも奢ってよ」
「今度な。今日は晴翔と三年振りに会えたんだし、さ」
そこで大雅は、声を潜めた。
「母子家庭なわけだろ、今。俺らに合わせてここにきたけど、もしかしたら余分な金持ってないかもだからお祝いってことにしとけ」
あ……、そんなこと、考えもつかなかった……。
レジでお金を払う大雅の背中が、なんだか大人に見えて仕方がない。大雅、いつの間にそんな、気配りができるようになったんだろ……。
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