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3. 「人殺し」呼ばわりされました
ぼくは、どんな失敗をしても殴られなかった。
所長直々の「 禁止命令 」 が出ていたので。
が、人権尊重の精神とかではない。
大学紹介のバイトを殴ってトラブルに。
そうなると、大阪本部へ帰れない恐れが。
彼の関心事は故郷でもある大阪本部へ帰ることのみ。
工場長は、工場では、ぼくと口をきくことさえせず。
指示・命令・指導は、すべて、アルバイト担当Aが行った。
ぼくの失敗はすべてAの責任になり、Aが工場長に怒られる方式。
このAが大問題。
工場長に厳しく指導(?)され、たまりたまったストレス。
そのストレス解消の絶好の標的にぼくはされたのだった。
所長命令があるので、ぼくに、暴力はふるえない。
が、暴言は、所長も工場長も実質黙認。
Aは、言葉の暴力なら工場長に勝るとも劣らぬ男だった。
Aは、初日から、ぼくを、「おいK」と呼び捨てに。
しかも、常に、何か恨みでもあるような口調で。
工場長ですら、常に、ぼくを「 K君 」と呼んでたのに。
Aに「 人殺し 」 呼ばわりされたこともある。
「 おいK、これ全部洗え !」
そう言って、使用済み道具が入ったボールを寄越してきた。
「 洗ったら、こっちに入れとけ!」
と、さらに新しいボールを2つ。
ぼくは、怒鳴られぬよう、丁寧かつすばやく洗った。
洗い終わった道具は、一つのボールに収まった。
「 洗い終わりました 」
「 人殺し!」
「 ナ、何のことですか ?」
「 『 なんのことですか 』じゃと、フザケルナ、これはなんな?」
「 大きなスポンジとか切るときのステンレスの板かと 」
「 これは手を切る怖れのある物か?」
「 え、まあ切れるといえばそうかも 」
「 わかっとって、同じボールに入れたんか、ワシを殺すつもりか!」
「 そんなおおげさな 」
「 なにがおおげさな、他の道具をとる時、ついウッカリがあろうが。
出血多量で死んだらどうするんな!?」
「ステンレスの板で出血多量はないんじゃ?」
「 なんで、ボールを二つ渡したんな、別々に入れるためじゃろうが。
手を切る恐れのある物と手を切る恐れのない物を 」
「 それなら最初から言ってくれれば 」
「 バカかおまえは、それぐらい、小学生でも知っとる日本の常識よ!
オマエ、本当に大学生か、大学でなに習いよんな!?」
『 道具洗い学 』とかは習ってねえ~よ!
確かに、別々に分けて入れておけば、安全。
でも、最初から教えてくれればいいのに。
なぜ?
どうして?
恐怖のZケーキ工場。
( 4.「 スパイ 」呼ばわりもされました に続く )
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