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 雪美も大きくなったはずだ。泣いているばかりだったあの子ももう掴まり立ちでもしているのではないか。そう考えると、胸が高鳴った。  梨沙子の住んでいるアパートに着いたのは夜の十時を回った頃だった。以前よりもアパートの外観が朽ちていた。壁のトタンは剥がれている箇所があり、鉄製の階段も錆びついている。軋む階段を上り、二〇二号室の前に立った。  狭間は梨沙子に連絡を入れていなかった。というより連絡を入れること自体忘れていたのだ。まあいい、どうせ家にいるだろう。そう思い、呼び鈴を押した。しかし、梨沙子が出てくる様子はない。何処かに出かけているのかと思い、自転車置き場に向かうと、梨沙子の乗っている自転車は蜘蛛の巣が張った状態で寂しそうにしていた。  まず、狭間が清住会に入ってから、梨沙子はスナックでのバイトを辞めた。雪美の面倒を見るというのに仕事をさせる訳にはいかないと狭間が辞めさせたのだ。こんな時間に子供だけを置いて、外出する理由もないだろう。
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