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「私も久しぶりですよ。上手に作れていればいいですけど」
匂いが味を保証していた。間違いなく美味しいカレーがそこにある。悠太はテーブルにカレーを持っていく際に唾を何度も飲み込んだ。リサに対する恐怖と隣り合わせで、満足に飯が食える喜びを噛み締めていた。
リサが自分のカレーを持ってきて、テーブルについた瞬間悠太はたまらずカレーに手をつけた。その時リサの鋭い視線が悠太の手を突き刺し、静止させた。
「ちゃんといただきますはしましょうね」
リサは悠太の手を取り、しっかりと合わせた。そして自分の手も合わせる。
「それではいただきます」
「いただきます」
生まれて初めて家でいただきますという挨拶をした。父親が料理に手をつけた瞬間が食べていいという合図だった家庭において、そんな挨拶は必要なかった。
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