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 何もかもが新しい。悠太はここが全く違う場所であると認識していた。素性の知れないリサが現れたことで悠太は不覚にも生きている実感を覚えていた。昨日、死を与えようとしていた人が今日は生の喜びを与えている。急転直下の展開に悠太の脳は混乱していた。 「味、どうですか?」  上目遣いで見つめるリサの頰は少しばかり赤く色付いていた。よく見れば黒目が大きく、二重の幅も広い。存在感のある目元だ。風呂に入っていないはずの肌も一切荒れていない。野暮ったい髪型を整え、化粧をすれば見違えるほどの麗人になる可能性を秘めていた。 「美味しいです。本当に美味しい」  悠太はそう伝えた後、笑っているリサの顔から目を逸らした。 「よかった」  リサは潤いのない髪を耳にかけた後、スプーンに小さく盛ったカレーを口に運ぶ。今まで隠れていた横顔が露わになる。悠太は下を向いたまま、カレーをひたすら口に運んでいた。
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