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「悪いな、叔父貴のために」 「川島さんにはお世話になったからね。何度も店に足を運んでくれた」  サジは献花を供えると、しゃがんで黙祷した。 「私たちはね、あなた方に守られているからこの街で商売できる。他に親身になって守ってくれる人なんていないんだ。いくら感謝しても足りないよ」  長く手を合わせながらサジは静かに語りかけた。それはここで命を落とした川島に向けて伝えられているような気がした。  極道はひどく嫌われる生き物だ。いるだけで街の厄介者にされ、事件が起きれば警察が事務所を家宅捜索。真っ当な仕事をしていると胸を張って言える訳ではない。違法に武器を調達し、シマで悪事を働く者がいればすぐに制裁を下す。シマを守る代わりに飲食店からはみかじめ料をもらい、高額な利子をつけて金を貸す。シノギと呼ばれる暴力団の仕事は全て法に触れてしまうようなものである。
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