10

3/20
前へ
/397ページ
次へ
「いや、今日は休みですが」  納豆をかき混ぜながら悠太は気の無い返事をした。リサが住まうようになってから悠太は仕事終わりに朝食を摂るようになっていた。仕事を終えた後は空腹に耐えながら眠りについたものだったが、その苦しさをもう感じていない。  初日こそ深い眠りについていたリサも悠太の帰宅時間を把握し始めるとそれに合わせて朝食を作るようになった。ストーブすらなく、隙間風が絶え間なく入って来る極寒のあばら家で寒さを押し殺しながら朝食を作るリサに対し、悠太は最初作ることを辞めるように頼んだ。  しかし、「寒いのはいつでも一緒です。気にしないでください」と言い、翌日からは体に毛布を羽織って、朝食を作っていた。 「もしよろしければ冷蔵庫を買いに行きませんか? せめて冷蔵庫くらいはあったほうがいいと思うんです」  悠太はリサの問いかけに少しばかり怒りを覚えた。多くは語っていないとしても、部屋の様子を見れば金がないことは明らかである。それにリサはこの家の住人ではない。そんな女に家電用品を買おうと説得される義理はどこにもなかった。
/397ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加