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悠太と狭間の出会いは十二年前のこと。当時小学二年生だった悠太は、上下灰色のダブルスーツに身を包んだ狭間が自室の前で煙草を蒸している姿を目撃した。サングラスをかけた大柄の男を目の前にして、悠太は自然と後ずさりする。
その音に気付いた狭間はサングラスを頭にかけた後、ニヤリと笑いながら悠太の元に躙り寄った。その表情には寒気を覚えるような不気味さがあった。
「悠太くんかい?」
ぎこちない笑顔を浮かべながら狭間は聞いた。ドスの利いた声に悠太は小刻みに震える体を抑えられなかった。
「恐がらなくていいよ。おじさんはお父さんのお友達だから」
そう言って狭間は悠太の目線に合わせてしゃがみ、肩を優しく摩った。お父さんにはこんなに怖い友達がいたのかと驚いたが、友達と聞いただけで悠太の痙攣に似た強張りは少しだけ解かれた。
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