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「よし、じゃあおじさんとご飯食べに行こうか」  悠太の手が狭間の手に包み込まれる。今まで感じたことのない暖かさだった。悠太と狭間は二人並んで歩いていく。  大柄な狭間が少しだけ背中を丸めながら悠太の小さな歩幅に合わせて歩を進める。街の雑踏の中でその姿は親子以外の何物でもないように見えた。  二人は街の大通りから外れた小道へ入っていく。少しばかり歩くと小さな喫茶店があった。店と比例するような小さい看板には「道」と書かれている。  埃っぽい匂いのする古ぼけた店内には人がいなかった。カウンターにはマスターの姿も見えない。 「サジさん。いるかい?」  狭間の問いかけからいくらか間が空いて、裏手の調理場から無造作に伸びた白髪を束ねた老人が現れた。丸くて小さな眼鏡が鼻の頭まで落ちかけている。
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