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「おう、狭間さん。こんな時間に珍しいね」  サジは白く長い髭を触りながら、カウンターの外へ身を乗り出す。 「可愛いお客さんも一緒じゃないか」 「まあ、色々あってな」  狭間は悠太の手を優しく引いて、奥にあるボックス席へ向かった。 「ここに座っていいぞ」  促された場所は毛羽立ち、至る所に煙草の焼き跡があるソファだった。悠太は軽く座面を手で払った後に座る。この行為に狭間は悠太が父親とは違い潔癖症の気があることを知った。  よく見れば悠太は父親に似ていない。原始人のように鼻の穴が広く、唇の厚い父親とは違い、悠太の顔は小鼻が小さく、鼻筋が通っており唇も薄い。似ている点を挙げるとするならば線の深く入った二重まぶた程度だろう。会ったことはないが悠太の母親は相当な上物だと思われた。
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