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 もう一度、狭間は呼び鈴を押した。しかし、またも返答はない。不審に思った狭間はドアを叩いた。すると、中から雪美の泣き声が聞こえてきた。もしかしたら本当に子供だけを置いて、梨沙子は何処かに出かけたのかもしれない。  ドアノブを捻ると、鍵がかかっていなかった。狭間は勢いよく室内へ入る。真っ暗闇の中で雪美の大きな泣き声だけが響いていた。その声を頼りに狭間は寝室へと向かった。  そこに広がっていたのは想像もしていなかった現実だった。一枚だけ敷かれている布団が不自然に山を作っている。雪美が泣いていてもその山が動きはしなかった。 「おい、梨沙子。いるんだろ?」  狭間は消え入りそうな声で呼んだ。もうわかっていた。梨沙子がいることも、そして、もう一人誰かがいることも。  しかし布団の山はまだ動かない。狭間の怒りは沸点に達しかけていた。
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