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「おじさん、ごめんなさい」
狭間がオムライスを食べ終え、口をナプキンで拭いていた時だった。悠太は俯いたままそう言った。
「どうして謝るんだ?」
「ご飯残しちゃったから」
悠太は足の先を居心地が悪そうにぶらぶらとさせていた。咄嗟に叱られるのだと察した悠太は怒号が落ちる前に行動したのだった。
「いいんだよ。悠太くんが残してくれたからおじさんも美味しいオムライスを食べられたんだ。悠太くんのおかげだよ」
狭間は悠太の頭を優しく撫でた。艶のあるストレートの黒髪は狭間の指の間を緩やかに滑っていった。
悠太は食事を残してしまったことに罪悪感を抱いていた。それは食べ物が無駄になってしまうからではない。残せば、父に叱責されるからである。
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