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父がいなくなった部屋で悠太はくだらないバラエティ番組を食い入るように見ていた。それは面白くもない。テレビに映る人たちが爆笑の渦に巻き込まれている理由もわからなかった。
ただテレビを見ていないと父と狭間の関係ばかりを考えてしまう。そんな尋問を自分に問いかけたところで答えは出ない。テレビはそんな悠太の気を紛らわせてくれる、その場で唯一の心の拠り所だった。
バラエティ番組が終わる頃、父は帰ってきた。その後ろにもう狭間の姿はない。背中を丸めて部屋に入ってくる父の姿は弱々しかった。
「遅くなってごめんな」
そう言って、父は奥の寝室へと入った。その日はそれから悠太の前に顔を見せることはなかった。
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