15/26

69人が本棚に入れています
本棚に追加
/397ページ
 それからニ週間に一度のペースで夕方になると狭間がアパートにやってきた。その時間に父がいないときは必ず悠太を何処かに連れていった。食事以外にもゲームセンターやバッティングセンターにも行った。  だが悠太に強烈な印象を与えたのはパチンコ屋だった。店内へと足を踏み入れた瞬間に激しい光彩と騒がしい演出音が悠太を包む。その騒々しい世界は悠太の気持ちを何故か高ぶらせた。  狭間はパチンコ台が強烈な光を発する度に「来い!」と大きな声を上げ、演出が素っ気なく終わる度に、台の下を思い切り蹴り上げていた。悠太はその姿を見て、最初こそ怖さを覚えていたが、次第に滑稽な姿だと感じるようになった。台を蹴る度に隣でくすくすと笑っている悠太を見て、狭間は眉間の皺を伸ばし、笑顔を向けた。 「悠太くんもやってみるか?」  悠太が頷くと、狭間は隣の台に座っている悠太を抱き上げて、自分の膝の上に乗せた。
/397ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加