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「父さん、まだ帰って来てないんですね」  悠太は自然と狭間に対して敬語を使った。中学に上がり、面倒な上下関係が出て来たため、年上の人には自然と敬語を使うよう頭が口に指令を送っていたのだ。狭間と再会するまでの期間が長く空いてしまったことも要因の一つであった。 「何だよ、敬語なんて使えるようになったのか?」 「なんか癖で」 「上下関係って奴か。まあ誰もが通る道だな」  煙草の白い煙が龍のような姿になって、天に昇っては消えて行く。そして狭間はまた深く煙を吸い込んだ後に革靴で捻るように吸い殻を踏みつけた。 「ちょっとどっか行くか。親父が帰って来るまで」  そう言って狭間は歩き出した。昔とは違い、悠太はその後をゆっくりと付いていった。  狭間の選んだ場所は夕暮れが迫り、人気の無くなった公園だった。所々色の剥げたベンチに悠太は腰をかける。
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