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「ちょっと待ってろよ」
そう言うと狭間は近くにある自販機から飲み物を買ってきた。狭間の手には冷たいココアが握られていた。
「悠太くんが好きな飲み物、これしか知らなかったわ」
悠太に向けて狭間はココアの缶を投げる。それを悠太はしっかりと受け取った。その後に狭間がどっしりとベンチに腰を下ろす。その重みで少しだけベンチが軋む。
「まあ、飲めよ」
「いただきます」
悠太がココアを口に含むと、ミルク感のない薄い甘さがいつまでも舌に纏わり付いた。あのとき飲んだココアとは名前が同じでも、全く違う飲み物だと感じた。
狭間は正面を向きながらコーヒーを一口飲んだ後、すぐ煙草に火を点けた。そして大きく煙を吸い込む。火種が巻紙の上を一気に走り始める。
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