鉛の感情

３

「そうだったんですね」

「俗にいう借金取りって奴だ。お天道様に顔向けできない仕事だよ」

　そう言いながらも夕日に向かって煙を吐いている狭間の姿は滑稽だった。きっと日中も同じようにお天道様に向けて煙を吐き続けている。それを想像すると笑いがこみ上げた。

「なんか面白いこと言ったか？」

「いや、すいません」

　悠太は何度か頭を下げた。

「まあさ、謝りたいんだ。長い間、悠太くんに偽りの関係を伝えていたことに」

　狭間はベンチを降りて、膝に手を置いた後深く頭を下げた。ポマードで固められたオールバックの髪の毛が一糸乱れず、整然と形を保ち続けている。

　悠太は目の前で狭間が頭を下げている姿に度肝を抜かれた。威厳のある狭間が自分に向けて謝罪をしている現実を受け入れられなかったのだ。