25/26

69人が本棚に入れています
本棚に追加
/397ページ
 果ての見えない地獄にもう悠太は足を踏み入れている。その地獄が生きている間、永遠に悠太の体に纏わりつく。その枷を外せはしない将来が待っている。 「狭間さんは何も悪くありませんよ。悪いのは僕の父ですから」  不意に狭間へ向けられた悠太の笑顔は屈託のないものだった。その笑顔に耐え忍んでいた狭間の涙腺は崩壊する。  狭間のぎこちない笑顔と厳しい表情しか知らない悠太にとって、そのしわくちゃになった顔は胸を締め付けるような苦しさを与えた。だが狭間は自分のために泣いてくれている。その姿に希望を見出していることも確かだった。  借金の存在を知ったあの日。それ以降も悠太と狭間の関係性に変化はなかった。だが、それはまた暫く振りに狭間と会った際、彼の態度が以前と変わらぬものだったからかもしれない。感情を表に出し、一喜一憂する姿に悠太は好感を持っていた。年を取るごとに様々な情報が脳内に蓄積されていく。
/397ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加