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 取り立てに来る男は本来であれば金を返済しない客には冷酷であり、非道である。しかし、いつも暖かく見守ってくれる狭間に悠太はそのような人間味の無さを感じることはなかった。反対に父には人間味を感じていなかった。  堕落した生活のせいで莫大な借金を作り上げ、まともな仕事にも就かずに貧相な飯を食わせている父は、きっと働けるようになった自分を当てにするのだ。そうして、二人で金を返す日々が果てなく続いていく。自分の作った借金を子供に残す親なんて非情だ、と悠太は感じていた。  いつしか狭間が父親であれば、などと夢想するようになった。悠太には多くのことを語らない父。それと同様に悠太も自分自身について父に話す気はなくなっていた。  無機質な親子関係。それは形式上そこに存在しているだけの心が通い合わない疑似家族であった。父に感じるはずだった親子としての感情を狭間に抱いていた悠太にとって、狭間の存在は間違いなく父よりも大きな存在だった。
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