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 殺人事件の起きた場所である、東北地方最大級の歓楽街、南栄町。その南栄町にあるほとんどの飲食店の利権を持っているのが県内随一の力を持っている清住会であった。その清住会若頭が狭間である。  殺されたのは狭間の叔父貴に当たる舎弟頭の川島静(かわしましずか)。昨日の夕方、狭間は隣県の暴力団、滝川一家の若頭が出所するため、そちらの祝い事に顔を出していた。  祝宴が始まった直後、狭間の携帯電話が鳴った。すぐに席を外し、画面を見るとそこには若頭補佐である真島豊(まじまゆたか)の名前が表示されていた。祝い事の件は勿論、真島も知っている。狭間は妙な胸騒ぎを覚えた。 「おう、どうした」 「川島の叔父貴が撃たれた。今すぐ帰ってこい」  真島の震えた声が惨状を物語っていた。川島は狭間が組に入った頃から世話になっていた叔父貴であった。ヤクザのいろはを教えてくれた川島が今生死の境を彷徨っている。すぐ祝宴の場を後にし、車を勢いよく走らせた。
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