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 何事もなく火葬場に着き、川島の遺体は業火に包まれた。清住会を守るために体を張り続けた川島が背後から近接距離で撃たれ、即死。極道の世界に若き頃から骨を埋めた者の最期は儚いものだった。  火葬場には遅れて本家や親戚団体、下部団体の役員たちも訪れ、警察の警戒態勢も徐々に加熱していく。だが警察が周りを張り込んでいるからこそ、相手も動きづらい。今回ばかりは狭間も警察の厳戒態勢に感謝していた。  肉体の消えた川島の骨を二十人ほどの極道者が鼻を啜り上げながら拾った。狭間は骨を拾い上げながら、犯人への報復を何とかして遂行しなければならないと心に決めた。  火葬が終わり、狭間が喫煙所へ向かうと清住が先に煙草を蒸していた。 「会長、外は危険です。一声かけていただかないと」 「お前も幹部だ。手下くらい連れてこい」  清住は狭間を軽くいなし、まだ火を点けたばかりの煙草から煙を深く吸い込んだ。左手には必ず杖が握られている。その手は小刻みに震えていた。
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