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 悠太は喫茶店「道」に向かっていた。悠太が以前、道へ顔を出したのはコンビニで働き始めた頃でまだ高校生だった。それに狭間が横にいた。  一人で道に入った経験はない。金もないため、喫茶店で飯を食う贅沢などできなかった。  金もないのに悠太が道へ顔を出すのには理由がある。マスターのサジが清住会の事件について何か知っているのではないかと踏んだからである。狭間が殺された訳ではないため、悠太に直接的な影響はない。しかし、確証はないが、清住会の人間である可能性の高い狭間が今後狙われる可能性もある。それを未然に防ぐ方法など悠太には何もないのだが。  悠太の心は揺れていた。ただ、狭間が目の前から消えてほしくはない。その一心で少しでも自分が力になれる点がないかを探っているのだった。  古ぼけた木のドアを開けると、店内に人の姿はない。昔からそうだった。大通りから少し入り込んだところに店があるため、人の入りが少ないのだろう。
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