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 悠太は狭間たちが組員を殺されたため、人目につかないこの店で会合を開いていたのではないかと考えていたが、その憶測は外れた。  結局何も情報は手に入らず、自分が何をすればいいかもわからない。もし狭間が殺されそうになっても指を咥えて見ているしかない。悠太は己の無力さを悔やんでいた。  ドアの開く音が聞こえる。サジとともに悠太も入り口を見つめた。そこにはいつもと変わらないグレーのダブルスーツに身を包んだ狭間の姿があった。  その後ろには若衆の正田がピタッと寄り添っている。狭間は悠太の顔を伺った瞬間に面食らったような表情を浮かべていた。正田はサジに挨拶すると、すぐに悠太の元へと歩み寄る。 「お兄さん悪いけど、少しだけ席外してもらえねえかな?」  薄い黄色のスモークがかかったサングラスから糸のように細い目を覗かせていた。上から悠太を見下ろすようにして睨みを利かせている。
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