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 家が貧乏であったため、周りの友達が当たり前に食べている料理やお菓子の味を、幼い頃は知らなかった。その子供達が好む味を教えてくれたのは、狭間だ。この世界にはまだ知りもしない美味しい食べ物が眠っている。彼が見せてくれた世界は明るく輝いていた。  初体験はいつでも期待が大きい。全てが好奇心の元に動けば何事も期待値が高くなる。しかしその好奇心の末、経験したことが自分のトラウマとなれば今後一切、その事例を受け付けはしない。それは一種の防衛反応とも言える。  自分を守るために働くこともある好奇心を幼い頃に金銭面や親子関係によって遮られれば、大人になってから経験するしか道はない。しかし、素直な好奇心を忘れた大人が得られる経験値は残念ながら少ない。  大人になってから味わう体験には感動も恐怖も乏しい。子供が純粋な気持ちで新しいものを感じる過程が生きる上で大事なのだ。そんなことを悠太はしみじみと感じていた。
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