10/13

69人が本棚に入れています
本棚に追加
/397ページ
「これ美味しいです」 「そうかい、よかったよ」  サジは嬉しそうに目尻を下げながら微笑んでいた。まるで孫が喜んでいる姿を見ているような、そんな雰囲気があった。 「サジさんは狭間さんがヤクザって知ってたんですか?」 「まあ、長い付き合いだからね」  サジは悠太の向かいに腰を下ろした。そして煙草の箱をワイシャツの胸ポケットから取り出す。悠太はテーブルに置いてあった灰皿をサジの目の前に置いた。サジは手を合わせてお礼をする。 「悠太くんは吸わないのかい?」 「僕は吸いません」 「悪いね、じゃああっちで吸ってくるよ」 「あ、いいですよ。周りで吸われることには慣れてるんで」  サジはまた同じように手を合わせて、煙草に火をつけた。煙草の煙は天井付近で薄い雲を張っていく。サジが煙草を吸っている間、悠太は滞留している煙を見ながら、冷め切らないコーヒーを少しずつ啜った。
/397ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加