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「これ美味しいです」
「そうかい、よかったよ」
サジは嬉しそうに目尻を下げながら微笑んでいた。まるで孫が喜んでいる姿を見ているような、そんな雰囲気があった。
「サジさんは狭間さんがヤクザって知ってたんですか?」
「まあ、長い付き合いだからね」
サジは悠太の向かいに腰を下ろした。そして煙草の箱をワイシャツの胸ポケットから取り出す。悠太はテーブルに置いてあった灰皿をサジの目の前に置いた。サジは手を合わせてお礼をする。
「悠太くんは吸わないのかい?」
「僕は吸いません」
「悪いね、じゃああっちで吸ってくるよ」
「あ、いいですよ。周りで吸われることには慣れてるんで」
サジはまた同じように手を合わせて、煙草に火をつけた。煙草の煙は天井付近で薄い雲を張っていく。サジが煙草を吸っている間、悠太は滞留している煙を見ながら、冷め切らないコーヒーを少しずつ啜った。
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