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「勿論、例に漏れず狭間さんの所の組も、法外な金利をつけて金を貸しているだろう。だが、狭間さんはカタギに手を出すような人じゃないと思っている。ヤクザだとしても、彼には人情がある。普通の人間と、何ら変わりないのさ」  悠太は初めて自宅に狭間が来た時を思い出す。あの時、狭間と外に出て行った父は借金を返してもいないのに、暴力を振るわれた形跡がなかった。  だからこそサジの言い分が間違いではないと思っていた。実際、父にも悠太にも凄みを効かせた瞬間は一度もない。父に関しては見たことはない、が正しいかもしれないが。  それに悠太が工場で働き始めの頃は研修中で賃金が少なく、予定通りに返済できない月があった。悠太が申し訳なさそうに伝えると、また来た時に払ってくれればそれでいい、とだけ伝えて、去っていった。  本来ならば気が済むまで殴られ、小金でも取られるのだろう。狭間はそのような借金取りの姿とは全く違っていた。
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