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「一昨日の夜、この店に誰か来なかったか?」
「その日は店で棚卸し作業をしていたけれど、店には誰も来なかったよ。それがどうかしたのかい?」
深く吸い込んだ煙が濃い灰色の魔物のように舞い上がる。その煙はサジの周りを不穏に滞留していた。
「ここは大通りから離れてる店だからよ。犯人が身を隠すためにこの店使った可能性も捨て切れないと思ってな」
「そうだったのか、力になれずすまないな」
「まあ、変な奴が来たらサジさんはすぐに連絡をくれるだろうから、どうせそんな奴は来てねえと踏んでたけどよ」
煙草を消した後、狭間はコーヒーを一啜りした。正田はコーヒーに手をつけずサジの様子を伺っている。まるでサジから飲んでいいという承諾を得ようとしているようだ。
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