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「とりあえずまた宴の席を設ける時はよろしく頼むよ。また連絡する」 「こんな汚い場所で組員さんに飲んでもらうのは心苦しいけどね。申し訳ないけれど、いつでも使ってくれよ」 「今は料亭もホテルも使えねえからな。サツが嗅ぎつけねえ場所で酒を飲めるってのが一番よ」  コーヒーを飲み干し、狭間は腰を上げる。昨今の暴力団排除条例の施行には狭間も頭を抱えていた。そのせいで組の定例会、祝いの席といった行事も今では組の事務所やサジの店で行うようになっている。  動きを制限されるほど、こちらは他人を巻き込んでいない。暴力団の悪評ばかりを世間に広げたのはマスコミだ。奴らの過剰な記事の演出が暴力団員の首を絞める。 「まあなんか情報が入ったら連絡してくれよ。些細なことでもいいからよ」  狭間はそう言って店を後にした。小汚い裏通りを歩きながら、近くのパーキングへと向かう。空はまだ灰色の幕を張っていた。
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