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「あの夜、本当に誰も来なかったんですかね?」  正田が不安そうな面持ちで狭間に問いかける。まだサジがクロかどうかは分からない。しかし、日頃から道は夜になると暗闇に包まれていたことを正田は知っている。棚卸しの可能性も否定はできないが、喉に小骨が刺さったような違和感を覚えていた。 「サジさんが言ってんだ。まずは信じてやらないとな」  狭間はスーツの内ポケットからタブレット菓子を取り出した。そしてそれをふた粒口に放り込む。音を立ててそれは砕けた。 「サジさんは何かを隠していると思うか?」  狭間は右側の口角だけを上げて、正田に問いかけた。正田はその不敵な笑みに思わず体を震わせる。 「ヤクザは疑いから入るもんかと」  正田の答えに対し、狭間は高らかに笑った。
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