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「おい、傘貸せ」  正田は怪訝そうな表情を浮かべながら、狭間に傘を譲る。そのまま狭間は彼女の元に向かっていった。 「嬢ちゃん、これ使いな」  大柄で恐ろしい顔をした男が目の前に現れ、彼女は一瞬身構える。それを察した狭間は取り繕ったような笑顔を浮かべた。 「返さなくていいからよ」  傘の柄を彼女の手に近づけると、恐る恐る彼女は受け取った。 「ありがとう、ございます」  彼女は深々と頭を下げて、狭間の横を颯爽と過ぎ去っていく。正田はその狭間の行為に感銘を受けていた。極道はカタギに対して優しく接していかなければならない。常々口にしていた狭間の言葉が余計に心の中まで染み入った。
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