2/12

69人が本棚に入れています
本棚に追加
/397ページ
 スーパーに寄り、半額になっている弁当をカゴに放り込む。ベランダに放置しておけば明日の昼くらいまでは食えるだろうと、悠太は考えていた。  洗濯物すらろくに干せない猫の額のようなベランダも冬になれば便利なものである。  水道料金を払い終え、水に困らない生活が約束された悠太はカップラーメンの置いてある棚を見ていた。その時だった。  悠太の横にいた若い女が袋ラーメンを大きめのトートバッグに詰め込んだ。薄手の色あせたパーカー、膝付近に穴の空いたスキニージーンズ。化粧気もないその女の格好は、冬の色に染まりかけているこの土地では違和感を覚えるものだった。まるで自分は貧乏で着るものもないのだ、と主張しているように見えた。  女は悠太に犯行を目撃されたと察知した瞬間に早足でその場を後にする。悠太は迷いなく、その後をつけた。
/397ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加