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 自室の鍵をウインドブレーカーのポケットから出す。悠太の指は悴みとは違う震えをまだ覚えていた。ポケットの中で鍵が指の中を何度もすり抜ける。この女を入れてはならない。そう体が伝えている気がした。  やっとの事で鍵を掴み、鍵穴に差し込む。その単純な動作すら、指先が震えてうまくいかない。難解なピッキング作業を行なっているのではないかと錯覚してしまうほどだった。 「どうぞ」  ドアを開け、悠太は女を家に招き入れた。それだけはやめた方がいいと心が叫んでいる。だが、死にたくはない。もしあの銃が本物ならば、自分の命は一瞬にして消え去ってしまう。そんな幻想のような事態を恐れていた。  廊下の蛍光灯が女の顔をより白く見せていた。顔中の血を全て抜かれたのかと勘違いしてしまうほど、青白かった。 「失礼します」  泥で茶色に変色してしまったスニーカーを脱ぐと、女は綺麗にそれを揃えた。そして悠太が乱雑に脱ぎ捨てた靴も横に揃えた。
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