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「汚い部屋で、すみません」  裸電球に明かりを灯すと、殺風景な部屋の内情が姿を表す。家具は角に置いてある古ぼけた箪笥のみ。壁は煙草のヤニで黄色く変色し、隣の部屋を隔てる襖は所々が破れている。物はないが、汚い部屋。生活感があるようでない、という矛盾が引き起こされていた。 「大丈夫ですよ」  女は笑顔を悠太に向ける。先ほどまで人に銃口を向けていたとは思えないほど優しい顔だった。彼女の変貌に悠太はさらなる恐怖を覚えながらも、必死に平然を装っていた。 「どうぞ、座ってください」 「ありがとうございます」  綿が薄くなった硬い座布団に女は正座した。その姿を確認した後に悠太も腰を下ろす。いつものように胡座をかこうとしたが、今置かれている状況が自然と正座をさせてしまう。
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