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「お名前をお聞きしてもいいですか?」 「あ、は、いや悠太です。そちらは?」  思わず名字を口走りそうになり、悠太は奥歯を力強く噛みしめる。端場という名字はそう多くない。何かに悪用される可能性も考慮し、咄嗟に名前だけを述べた。 「私はリサです。よろしくお願いします」  リサは床に両手を揃えるようにして突き、背筋を伸ばしたままゆっくりと倒した。その流れるような動作には、一瞬だけ気品が漂っていた。汚い服装が目に入ると、悠太にはその所作が夢であったかのような錯覚に陥った。  その夜から悠太の寝床はリサが使用する運びになった。父親が使っていた布団を貸し出そうとも考えていたが、二年間放置した布団からはカビの匂いがする上に、シーツも父親の汗が染み込んだままで黄色く変色していた。仕方なく悠太はその煎餅布団を敷いて、嫌な匂いに包まれながら眠ることとした。
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