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 今まで布団に入り込めば、ものの数秒で眠りについていた悠太だったが、今日は違った。もし寝ている最中にあの拳銃が本物だとして殺されてしまったら。考えが悪い方向へ行けば行くほど、暗闇の中で目だけが爛々と鈍い光を放った。薄い襖の先でリサの寝息が聞こえる。無音の空間で小さなその音だけが響いていた。  朝日が差し込む頃、悠太は充血した目で天井を眺めていた。夜、仕事が控えているというのに一睡もできなかった。それはリサに対する恐怖が消えない限り、果てしなく続くのだろう。  程なくして襖が開く。悠太は思わず寝たふりをした。薄目を開けて確認するとリサは悠太の近くで屈み、手のひらを口元に寄せた。その行動に悠太は驚きながらも、規則正しいリズムで寝息を演出した。  悠太が寝ていることを確認した後、リサはそのまま外へ出ていった。悠太は体を擡げて玄関へ向かい、ドアの覗き穴から廊下を眺める。近くに人の姿がないと確認すると、すぐにリサの寝ていた部屋へ足を踏み入れた。
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