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 唯一の荷物であるトートバッグはまだ置いてあった。悠太はその中身を恐る恐る覗き込む。レースのカーテンが送り出す淡い光の中で真っ黒な拳銃が気味の悪い光沢を帯びていた。  実際にそれを持ち上げてみると手にしっかりと重みが伝わってくる。グリップは手に吸い付いてくるようで、モデルガンと言われなければ本物と間違ってしまうほどの出来だった。  しかしそれ以上の情報を確認できなかった。本物の拳銃だとしたら、視認しただけでは実弾が入っているかわからない。本当にモデルガンだとしても、どこを見ればモデルガンであると判断できるのかはわからない。 悠太は静かに拳銃をバッグに戻した。暴発する可能性も考え、ハエも止まるような速度で優しく底面に置いた。  布団に戻り、リサが帰ってくるまでの時間、少しだけでも眠りにつこうと目を閉じる。リサのいない安心感からか、悠太はすぐ夢の中へ誘われた。
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