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「カレーでもいいですか?」  リサの声に悠太は財布を持ったまま、勢いよく振り返った。幸い、リサは鍋をまだかき混ぜていた。悠太は安堵の息を漏らす。 「大丈夫です」  胸をなでおろした後、悠太は財布をそっとテーブルに置き、近くにあるラジオの電源を入れた。昼のニュースが流れていた。最近まで流れていた暴力団関係者の殺人事件は遠い過去の話題となり、田舎特有の平和なニュースばかりが提供されていた。 「布団片付けてもらってもよろしいですか?」  しばらくラジオに聞き入っていた悠太はすぐに立ち上がり、煎餅布団をたたみ始めた。その布団を部屋の端に追いやり、テーブルを中心に運ぶ。ティッシュで軽くテーブルを拭くと、リサが真新しい布巾を持って居間に現れた。
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