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「これで拭いてください」  悠太は布巾を受け取り、テーブルを拭いた。真白な布巾が茶色に染まっていく。あまりの汚さに思わず、変な声が出てしまった。何年も拭きそびれたままのテーブルには汚れが何層も蓄積されていた。 「お皿、どこにありますか?」  台所を見回しているリサの元に悠太は向かい、戸棚から埃にまみれた花柄の皿を取り出す。一つは皿の端が欠けていた。 「こんなものしかなくてすみません」 「いいですよ。洗えばすぐに使えますから」  リサはうっすらと笑みを浮かべた後、皿を丁寧に洗った。気付けば真新しいものが増えている。新しい洗剤に新しいスポンジ。それに先ほどの布巾も新品だった。死んでいた部屋に、新しい命が芽吹く爽やかな息吹をリサが吹き込んでいた。
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