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「炊飯器も埃まみれで使えるか心配だったんです。ちゃんと使えてよかった」  息を吹き返した皿に綺麗な白米が盛られた。湯気が炊きたての米の匂いを悠太に運ぶ。嗅いだ瞬間に自然と笑みがこぼれた。そこにカレールーが半分だけかけられる。大きな具材の入っている家庭的なカレーだった。 「カレーなんて久しぶりに食べますよ」  色々と問いただしたい気持ちは押し殺した。リサに聞きたいことはたくさんある。しかし何から聞いていいかもわからなければ、何を聞いていいかもわからなかった。その上、まだ恐怖は頭の中にこびり付いている。  間違った質問を投げかければリサは昨日のように豹変する。それを避けて、生活を送ることだけが、悠太のできる唯一の生きる術だった。
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