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 その夜、俺はベッドの中でまたスマホに向かっていた。  まだ投稿サイトの仕組みというやつがよくわからないので「ムカつくコメント、通報」で検索していたのだ。  それで思いがけず知った。投稿してもコメントがつかないことなどザラなのだと。  だったら俺は、コメントゼロの奴らよりはマシってことじゃないか?  俺は「キモ」というコメントをそのままにして、続きを考え始めた。  敗因はあれだ。不倫だからだ。  投稿サイトの読者は若い奴が多いっぽいから、大人の女は良くなかったんだろう。  だったら独身の若い女ととっかえひっかえ付き合う話にしよう。主人公モテモテのターンだ。  なんだかんだ、若い男の赤裸々な願望なんてそこだろ?   俺はそうだ。  ああ、そうだ。付き合う女たちのひとりは友だちの元カノってのもいいよな。そいつより俺を選んだってことになるもんな。  妄想を吐き出す楽しさに、俺は一夜にしてすっかりはまってしまっていた。  そして俺はそういう話を書きなぐり、投稿して、寝た。 ◇◇◇  翌日また上司のミスを押し付けられ、俺は修正のためにパソコンに向かう。スマホに着信があり、今度はその場で開けた。デスクで私用にスマホを使うのは暗黙の了解で禁止されていたが、知ったことか。 『この妄想更新する勇気すげえな』 『カテエラだって誰か教えてやれよ』 『病院池』 ◇◇◇  カテエラ、すなわちカテゴリエラー。  ここに投稿するのにふさわしくない、ということらしい。  でも今日はコメントがみっつだ。みっつも反応がある。  興味は持ってもらってる。あとはこの評価をひっくり返せばいいだけと考えれば、ノー反応より勝機はある。    俺は再び、ベッドの中でスマホに向かった。 ◇◇◇  連日主人公がモテモテな話を投稿していたが、反応は芳しくなかった。  やっぱり美人とばっかり付き合うのはリアリティがなさすぎだろうか。  最近の若い男は、案外常識派だとも聞く。がつがつ人のものまで奪ったり、高根の花を狙ったりしないのだ。  考えた俺は、容姿がそれほどでもない女と付き合う話を書いた。  コメント欄は、一段と荒れた。
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